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『坂の上の雲』第3話をみて

2009/12/14 23:43

 

結論からいえば、第3話は今までで一番面白かった。見せ場が盛りだくさんで、フレンチのフルコースを食べているかのようだった。(私は和食党なので、たとえのフレンチにはかすかな悪意が混ざっているが)秋山父(伊東四朗)が死ぬ前後のエピソード、渡哲也演じる東郷平八郎の初登場、好古が旗本のお嬢さん(松たか子)と結婚するエピソード、加藤剛演じる伊藤博文の芝居、好古が日清戦争に出征するさいの夫婦の別れのシーン…   いやあ、なかなか充実感のあるドラマだった。

 

第1話をみて、原作に忠実なドラマ作りを行っているなと思った。第3話までみたが、その方向性は一応守られていた。NHKは余計な脚色をせず、最後までその姿勢を堅持して欲しい。しかしモンタージュの手法で、原作にない『NHKらしさ』を一部発揮していた。日清戦争前夜のエピソードで、仁川のシーンが挿入されていた。そのシーンは『無垢な朝鮮の子ども』『どしゃ降りの雨夜』『日本軍の行進』をミックスさせることで、不気味なモンタージュをつくり出していた。原作にないイメージだった。

 

『NHKらしさ』というか『天地人』風のデタラメもあった。ディテールの話ではあるが、脚本の時間軸が混乱していた。第2話の見せ場の一つに、好古がフランス留学を決めるさいのシーンがあった。宝田明演じる松山藩執事と好古との芝居が見ものだった。ジーンとくるシーンだった。そのシーンの直後、『1年後』というスーパーが入り、広島県江田島で訓練を行う真之の映像が登場した。ナレーションでは、海軍兵学校が築地から江田島に移ったのは真之が3年生の時で、江田島に移った最初の夏に休暇があり、真之は松山に帰郷したと説明していた。真之はこの時子規の実家に立ち寄った。そのさい子規の母は「ノボ(子規のこと)は東京で元気にやっとりますか?」と語り、真之は「実はあしが予備門をやめてからおうとりません。もう1年になります。しかしノボさんの噂は風の便りで聞いとります~」と語っていた。真之は海軍兵学校に入学して3年経っている。東京大学予備門をやめてから会っていないのでもう1年になりますという話は、まったく辻褄が合わなかった。

 

昨日の回では、喀血した子規が病気療養で松山に戻っているさい、休暇で松山に戻った真之が子規の家を訪ねるエピソードがあった。子規は真之に会うことを「3年ぶりじゃー」と喜んでいた。子規の妹は「実は去年の夏にも(真之は)戻っていた」と語った。もう時間軸が無茶苦茶である。正直いってディテールであり、作品にとって重要な問題ではない。しかしこういう脇の甘さは、作品の完成度を著しく貶める。

 

文句のいいついでだ。清の北洋艦隊が来日したさいの描写がまったく物足りなかった。この時日本に乗り込んだ戦艦定遠は東洋一の大きさで、当時としては信じられないような厚い装甲を誇っていた。定遠の巨大さや不沈要塞的威圧感は映像としてきちんと表現して欲しかった。日清戦争というか『坂の上の雲』を考える上で重要かつ必要なイメージだった。私は北九州市の小倉出身だが、小倉の手向山や門司、対岸の彦島や下関が要塞化(下関要塞基地)されはじめたのは、定遠が来日した翌年(1887年)のことだった。関門海峡の軍事要塞化は北洋艦隊の来日がきっかけだった。日本人は北洋艦隊にビビリ上がったのだ。清の軍規がデタラメで、モラルハザードを起こしていることは表現されていたが、片手落ち(差別用語?)だった。

 

『坂の上の雲」は秋山兄弟の話としてスタートするが、だんだん群像ドラマに変化し、最後は主人公は明治の日本そのものだったみたいな感じになっていく。その群像たちが着々と登場している。第1話は西田敏行演じる高橋是清、第2話は小澤征悦演じる夏目漱石、高橋秀樹演じる児玉源太郎、第3話は渡哲也演じる東郷平八郎、加藤剛演じる伊藤博文、國村隼演じる川上操六、大杉漣演じる陸奥宗光、江守徹演じる山県有朋らが登場した。キャスティングという点で、私の中で合格点は、加藤剛(伊藤博文)、西田敏行高橋是清)、渡哲也(東郷平八郎)、ギリギリ合格が高橋秀樹(児玉源太郎)、國村隼(川上操六)、残りの大杉漣(陸奥宗光)、江守徹(山県有朋)、小澤征悦(夏目漱石)はぜんぜんダメだった。(笑)3人とも嫌いな役者ではないが、役柄にマッチしていない。ギリギリ合格の高橋秀樹はどこまでも高橋秀樹のままで、児玉源太郎が高橋秀樹にしか見えなかった。國村隼の川上操六は「ドイツ帰りの陸軍きっての英才」にまったく見えなかった。川上操六がヤクザの親分みたいな感じだった。大杉漣は風貌・体格・知性等、あらゆる意味で陸奥宗光の匂いがしなかった。髭も衣装もとってつけたような感じだった。江守徹もそうだ。こちらは知性までは否定しないが、山県有朋の匂いがまったくしなかった。小澤征悦演じる夏目漱石は、夏目漱石を冒涜しているとしか思えなかった。漱石の知性がまったく感じられなかった。漱石の神経質な感じもまったくしなかった。「坊ちゃん」の主役だったら小澤征悦でもいい。しかしこの人は「こころ」を書いた漱石ではない。良いほうでは、加藤剛の伊藤博文が出色の出来だった。伊藤博文のシーンは、加藤剛の芝居をみているだけでも見ごたえがあった。加藤剛の伊藤博文には、胆力があった。伊藤博文は、日本の初代内閣総理大臣でその延長線上に鳩山由紀夫内閣総理大臣が存在している。総理大臣が一億分の一くらいまで劣化している。

 

『坂の上の雲』は一気に放送して欲しいが、実際は3年がかりの放送だ。『坂の上の雲』は高揚感のある話だ。一気に放送すると愛国者が増えるので、愛国者を増やさないために、わざと冷却期間をおきながらNHKは放送するのだろうか?うがった見方だが。(笑)

カテゴリ: エンタメ  > テレビ    フォルダ: NHK大河ドラマ

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コメント(11)

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2009/12/15 06:09

Commented by 相模 さん

見巧者templeさんによる解説は本当に面白い。時間軸の話は、私もヘンだと気づきました。
日清戦争の導入の説明が物足りなく、原作はどう書いてあったか忘れましたがもっと丁寧に描いて欲しいと感じました。日本が追い詰められる切迫感が出ていません。
秀才・川上操六は何だか昭和の「無能悪辣軍人」風で、ここだけを取り出すと大東亜戦争の端緒に見えました。

3話では目が慣れてきたせいか、私は第1話の瑞々しさが印象に残りました。
日本人離れの面相であった好古は、士官の中にあって華やかさがあります。子規には生き急ぐ切迫感と悲しみが伝わります。真之にはこれからの凄みに期待したいです。律さんは新しい明治の女なんですね。

 
 

2009/12/15 13:58

Commented by ahhacah さん

templeさん こんにちは

  >清の北洋艦隊が来日したさいの描写がまったく物足りなかった。この時日本に乗り込んだ戦艦定遠は東洋一の大きさで、当時としては信じられないような厚い装甲を誇っていた。定遠の巨大さや不沈要塞的威圧感は映像としてきちんと表現して欲しかった。日清戦争というか『坂の上の雲』を考える上で重要かつ必要なイメージだった。私は北九州市の小倉出身だが、小倉の手向山や門司、対岸の彦島や下関が要塞化(下関要塞基地)されはじめたのは、定遠が来日した翌年(1887年)のことだった。関門海峡の軍事要塞化は北洋艦隊の来日がきっかけだった。日本人は北洋艦隊にビビリ上がったのだ。清の軍規がデタラメで、モラルハザードを起こしていることは表現されていたが、片手落ち(差別用語?)だった。

 一般に、日清戦争は日露の前哨戦、勝って当たり前の戦いだったようなとらえられ方が、後年なされるようになりますが、当時は違ったはずです。欧米列強の北洋艦隊に対する評価は高く、定遠長崎来港時には、日本人を舐め切った清兵の狼藉がもとで死傷者の出る乱闘騒ぎが起き、外交問題にまで発展していますよね。

 >キャスティングという点で、私の中で合格点は、加藤剛(伊藤博文)、西田敏行高橋是清)、渡哲也(東郷平八郎)、ギリギリ合格が高橋秀樹党(児玉源太郎)、國村隼(川上操六)、残りの大杉漣(陸奥宗光)、江守徹(山県有朋)、小澤征悦(夏目漱石)はぜんぜんダメだった。

 確かに、剃刀陸奥とか胃弱漱石という感じではないですね。加藤剛の伊藤博文は、見巧者の対極に位置するわたしにも、よかったです。

 >『坂の上の雲』は一気に放送して欲しいが、実際は3年がかりの放送だ。『坂の上の雲』は高揚感のある話だ。一気に放送すると愛国者が増えるので、愛国者を増やさないために、わざと冷却期間をおきながらNHKは放送するのだろうか?うがった見方だが。(笑)

 3年がかりの放送というのは、いつの時点で決まったことなのでしょうかね。

 
 

2009/12/15 17:29

Commented by 出羽之守 さん

>一気に放送すると愛国者が増えるので

まあ、愛国心を3年間持続的に涵養してくれると思えばどうでしょう。
山県は足軽以下の極貧から爵位の最高位に上り詰めた明治の秀吉ですね。
胆力と知謀の塊みたいな男だったのでしょう。江守もありかなあ、それとも桂太郎役なんかどうでしょう。日清戦争は平和ボケと軍事タブーで多少分かりにくい面がありますね。帝国主義時代にあって絶対防衛線を朝鮮半島に引いたためと理解しています。半島は日本の影響下に置くことでシナ、ロシアとの直接対峙しなくてよい、本土は絶対に戦場にしたくない、当然でしょう。そこへシナが出てきたからこれは叩かざるおえないでしょう。
大変面白く拝読しました。人物月旦、いつもながら鋭いですね。

 
 

2009/12/15 20:28

Commented by cbx6462 さん

朝鮮人の子供のくだり。
その他もろもろの描写でちょっと思う事。
原作は「坂の上の雲」で間違いないとは思うんですが。
どことなく「日露戦争物語」(漫画の)の影響も所々あるように思えてならない気がしますw。
高橋是清、東大予備門時代の夏目漱石等は原作には殆どいなかったように思うし原作では日清戦争はサラッと流す程度。
そういえば兼継も「花の慶次」の影響があったような。

 
 

2009/12/17 14:29

Commented by temple さん

相模さん、こんにちは、コメントありがとうございます。
>日清戦争の導入の説明が物足りなく、原作はどう書いてあったか忘れましたがもっと丁寧に描いて欲しいと感じました。日本が追い詰められる切迫感が出ていません。

日本は西洋に憧れ、西洋のようになりたいと思って、富国強兵に乗り出したわけでは、なかったと思うんですよね。このままでは外国の植民地になってしまうという強い危機感が富国強兵の根本にあったんだろうと思います。モチベーションは能動的なものではなく受動的なものだったんだろうと思います。

このドラマは時代的にペリーの黒船来航も薩英戦争も下関戦争も描かれていません。北洋艦隊の来日は、明治や「坂の上の雲」のある意味原点としてきちんと描くべきだったと思います。たしか原作はそういう感じに描かれていました。
>秀才・川上操六は何だか昭和の「無能悪辣軍人」風で、ここだけを取り出すと大東亜戦争の端緒に見えました。

関東軍の軍人みたいな感じでしたね。(笑)

>3話では目が慣れてきたせいか、私は第1話の瑞々しさが印象に残りました。

私も「面白さ」ではなく「名作度」とか「好き嫌い」では第1話のほうが上のような気がします。

第3話は甘酸っぱいデザート(好古夫婦の別れ)や食後のコニャック(東郷元帥の国際法事件)までついていました。(笑)第3話はゴージャスではありました。(笑)

 
 

2009/12/17 15:11

Commented by temple さん

ahhacahさん、こんにちは
> 一般に、日清戦争は日露の前哨戦、勝って当たり前の戦いだったようなとらえられ方が、後年なされるようになりますが、当時は違ったはずです。欧米列強の北洋艦隊に対する評価は高く、定遠長崎来港時には、日本人を舐め切った清兵の狼藉がもとで死傷者の出る乱闘騒ぎが起き、外交問題にまで発展していますよね。

タイムマシーンで明治に行ったわけではありませんが、(笑)知識人であればあるほど漢文が叩き込まれていた時代であり、中国に対してものすごく畏怖の念があったんじゃないかと私は考えています。たしか原作はそういう感じをきちんと描いていたと記憶しています。しかしドラマのほうは、艦隊の綱紀が乱れているという側面にのみ重みをおいた描き方でした。

ドラマはちょっとものめずらしいものがやってきた程度で、北洋艦隊に対する日本人の恐怖感がまったくといっていいほど描かれていませんでした。残念でした。

>確かに、剃刀陸奥とか胃弱漱石という感じではないですね。加藤剛の伊藤博文は、見巧者の対極に位置するわたしにも、よかったです。

加藤博文の「今でも高杉さんにどなられとる夢をようみるんじゃ」とか、芝居になんとも味わいがありましたね。ここ10年くらい、伊藤博文といえば、タイガー・ウッズ系の話ばかりが強調されてきましたが、政治家としてはきわめて立派な人物だったと思います。

加藤剛の伊藤博文は品格がありましたね。

 
 

2009/12/17 16:23

Commented by temple さん

出羽之守さん、こんにちは
>まあ、愛国心を3年間持続的に涵養してくれると思えばどうでしょう。
たしかに言えてます。(笑)

>山県は足軽以下の極貧から爵位の最高位に上り詰めた明治の秀吉ですね。胆力と知謀の塊みたいな男だったのでしょう。江守もありかなあ、それとも桂太郎役なんかどうでしょう。

山県有朋は、明治ファン?の間できわめて不人気ですね。好き嫌いはともかく、私個人は、山県有朋をかなり高く評価しています。理由は「明治の帝国陸軍は素晴らしかった」⇒「組織は人事なり」⇒「帝国陸軍の人事を仕切ったのは山県有朋だった」⇒「よって山県有朋は偉大だった」という論法です。

山県は朝日山の戦いで、絶体絶命のピンチに立たされたことがありました。この時、部下で奇兵隊参謀の時山直八が討ち取られました。長岡藩との戦いでしたが、敵の司令官は桑名藩雷神隊長立見鑑三郎(のちの立見尚文)でした。

山県は立見に何度も煮え湯を飲まされたのに、陸軍では立見を重用したんですよね。

山県は人から嫌われるようなエピソードに事欠きませんが、日本史にとって大恩人だと私は思っています。

 
 

2009/12/17 16:33

Commented by temple さん

cbx6462さん、こんにちは
>原作は「坂の上の雲」で間違いないとは思うんですが。
>どことなく「日露戦争物語」(漫画の)の影響も所々あるように思えてならない気がしますw。

実は「日露戦争物語」を全巻もっています。作者は生理的に嫌いですけどね。

この漫画は日清戦争でディテールにはまりすぎ、自爆しましたね。日露戦争物語なのに日露戦争がはじまる前に終わってしまいました。もう漫画じゃなく挿絵入りの本を読んでいるみたいな感じでしたね。立見尚文の話なんかけっこう面白かったんですが。

「坂の上の雲」が企画された海老沢会長の時代はまだまともだったんですよね。NHKの話ですが。今年の「JAPANデビュー」にいたる流れをみていますと、最近年を追うごとに、極端な左傾化が進んでいますね。「坂の上」も今現在撮影が進行している部分等、悪いことが起こらなければよいがと思います。


 
 

2009/12/23 10:46

Commented by あるぱか さん

temple さん こんにちは

>最近年を追うごとに、極端な左傾化が進んでいますね。「坂の上」も今現在撮影が進行している部分等、悪いことが起こらなければよいがと思います。

もうその傾向が見えますよね。
中韓に気兼ねしいしい、「日本人は悪い」って洗脳が進んで行くんでしょう。

ほとんどの人が小説を読まないでしょうから、”NHK版”坂の上の雲が今後のスタンダードになると思うとorz

NHKに「おかしい」と抗議しても、「編集上の都合です」と言い逃れされちゃうのは明らか、、
メディアを敵に回す難しさを思い知らされています。

 
 

2009/12/25 00:01

Commented by temple さん

あるぱかさん、こんにちは
>>最近年を追うごとに、極端な左傾化が進んでいますね。「坂の上」も今現在撮影が進行している部分等、悪いことが起こらなければよいがと思います。

第4話で悪い予感が的中しましたね。

>ほとんどの人が小説を読まないでしょうから、”NHK版”坂の上の雲が今後のスタンダードになると思うとorz

漱石の「こころ」なんか、日本人は全員読んでいるような気がしますが、実際は100人に一人くらいでしょうね。「世界の中心で愛を叫ぶ」に抜かれるまで日本一の売上を誇った「ノルウェーの森」も上下巻で800万部くらいですから、本を買った人は400万人程度です。30人に一人のレベルですね。小説はきわめて限られた人だけの世界ですね。

第4話の調子でドラマが進むのであれば、ドラマ化を中止するべきだと心の奥底から思います。

 
 

2010/11/25 12:49

Commented by まゆ さん

はじめまして
質問なのですが
何故予備校わ辞めて
1年会ってないというのは
つじつまがあわないのですか?

 
 
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